キキ・ストライクと謎の地下都市

キルステン・ミラー『キキ・ストライクと謎の地下都市』(理論社)


女子向けYA冒険小説。マガーク探偵団の少女版という感じの小説で、ミステリアスなアルピノのキキ・ストライクを中心に6人の少女たちがニューヨークの地下に存在する地下都市の謎を解き明かすというもの。キキ・ストライクを含め、他の5人の少女たちも変装の達人、科学の達人、ハッキングの達人など、ある種スニーカーズのような様相を呈した特殊技能な少女たちが、巨大な陰謀に立ち向かうという「少年・少女期」に読んでいたら絶対はまったであろう話ではある。

もともと地下に広がる巨大な空間をテーマにした小説というのは多くて、たとえばニール・ゲイマン『ネヴァーウェア』なんかがそう。逆のケースでは、クリストファー・ファウラーの名作『ルーフワールド』なんかがある。なんというか地下というのは迷宮化して、何となく人々の恐怖心や冒険心を誘う場所でもある。そんなわくわくした感覚をキルステン・ミラーはいくつかの謎をからめて、面白おかしく小説にすることに成功している。物語の語り手はキキではなくてアナンカ(インテリ少女)の方で、彼女の冷静な視点からNYの地下に広がるとされるシャドウ・シティの謎が明らかにされていく。

彼女らの能力が高いので現実味からかい離しているように思えるが、流石にそのあたりは巨大化した人食いネズミやその他云々の小さな謎などが連続して、見事にキキ・ストライクの謎までつなげていくという見事さ。これには唸ってしまいました。ということでボリュームもさることながら、実はシャドウ・シティに秘められた謎を解き明かしていくことにより、最後にはあっと驚く仕掛けが待ち構えているので面白い。また構成自体も面白くて、冒険者の心得みたいなものが各章の終りに付加されていてちょっとしたガイドになっているのも良い。

とまあ長々と書くのもあんまりこの本にふさわしくはないのでこのぐらいにしておく。少年・少女向けのYA冒険ミステリとしてはよくできている気がしました。