2008-01-01から1年間の記事一覧

翼の帰る処

妹尾ゆふ子『翼の帰る処』(幻狼ファンタジアノベルス・上下) 年末に大変素晴らしいファンタジー作品を読むことができて、心を温かくして年を越せそうです。久々の著者オリジナルの長編。和製ジェイン・ヨーレンと個人的に思っている妹尾さんの新作で、冬長…

翼の帰る処

妹尾ゆふ子『翼の帰る処』(幻狼ファンタジアノベルス・上下) 年末に大変素晴らしいファンタジー作品を読むことができて、心を温かくして年を越せそうです。久々の著者オリジナルの長編。和製ジェイン・ヨーレンと個人的に思っている妹尾さんの新作で、冬長…

キキ・ストライクと謎の地下都市

キルステン・ミラー『キキ・ストライクと謎の地下都市』(理論社) 女子向けYA冒険小説。マガーク探偵団の少女版という感じの小説で、ミステリアスなアルピノのキキ・ストライクを中心に6人の少女たちがニューヨークの地下に存在する地下都市の謎を解き明…

キキ・ストライクと謎の地下都市

キルステン・ミラー『キキ・ストライクと謎の地下都市』(理論社) 女子向けYA冒険小説。マガーク探偵団の少女版という感じの小説で、ミステリアスなアルピノのキキ・ストライクを中心に6人の少女たちがニューヨークの地下に存在する地下都市の謎を解き明…

九百人のお祖母さん

R・A・ラファティ『九百人のお祖母さん』(ハヤカワ文庫SF)なぜかわからないのだが、スルーしてきた作家のひとりで、今回ようやくじっくり時間をかけて読むことができた。実際読み終わるまでに3週間ほどかかった。というのは、21短編の大半が気が抜けないタ…

九百人のお祖母さん

R・A・ラファティ『九百人のお祖母さん』(ハヤカワ文庫SF) なぜかわからないのだが、スルーしてきた作家のひとりで、今回ようやくじっくり時間をかけて読むことができた。実際読み終わるまでに3週間ほどかかった。というのは、21短編の大半が気が抜けない…

麦酒アンタッチャブル

山之口洋『麦酒アンタッチャブル』(祥伝社Nonノベル)『天平冥所図絵』(文藝春秋)で古代官僚のドタバタ劇を描いた山之口洋。過去のイメージ的には生真面目さが前面に出ていて(それ自体も山之口氏の人柄がよく出ていて、僕は大好きなのだが)、人によって…

麦酒アンタッチャブル

山之口洋『麦酒アンタッチャブル』(祥伝社Nonノベル) 『天平冥所図絵』(文藝春秋)で古代官僚のドタバタ劇を描いた山之口洋。過去のイメージ的には生真面目さが前面に出ていて(それ自体も山之口氏の人柄がよく出ていて、僕は大好きなのだが)、人によっ…

火星夜想曲

イアン・マクドナルド『火星夜想曲』(ハヤカワ文庫SF)SF版『百年の孤独』。テイスト的にはマルケス80%、ブラッドベリ20%(『火星年代記』)という感じの作品で、翻訳者が書かれていますが、原文はものすごく難しいことが透けて見える物語構造と文…

火星夜想曲

イアン・マクドナルド『火星夜想曲』(ハヤカワ文庫SF) SF版『百年の孤独』。テイスト的にはマルケス80%、ブラッドベリ20%(『火星年代記』)という感じの作品で、翻訳者が書かれていますが、原文はものすごく難しいことが透けて見える物語構造と文…

ザ・ロード

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)世界のイメージはくすんだ灰色。『ザ・ロード』の世界は強いていえば、血の赤のみが時折存在する灰色の世界だ。すべてがくすんだ灰色の単色の中に閉じ込められ、父と子の旅を通じて読者もまた灰色の世界の中の虜囚になってしま…

ザ・ロード

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫) 世界のイメージはくすんだ灰色。『ザ・ロード』の世界は強いていえば、血の赤のみが時折存在する灰色の世界だ。すべてがくすんだ灰色の単色の中に閉じ込められ、父と子の旅を通じて読者もまた灰色の世界の中の虜囚になってしま…

追憶のハルマゲドン

カート・ヴォネガット『追憶のハルマゲドン』(早川書房)2007年4月に自宅の階段の転倒による脳損傷により惜しまれながら亡くなったヴォネガットの遺作短編集。序文は息子マーク・ヴォネガットの手によるもので、ヴォネガットの人柄(特にヴォネガットが文章…

追憶のハルマゲドン

カート・ヴォネガット『追憶のハルマゲドン』(早川書房) 2007年4月に自宅の階段の転倒による脳損傷により惜しまれながら亡くなったヴォネガットの遺作短編集。序文は息子マーク・ヴォネガットの手によるもので、ヴォネガットの人柄(特にヴォネガットが文…

ドゥームズデイ・ブック

コニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』(ハヤカワ文庫SF) 読んだのは5年前に出た文庫版。もう5年経過ですか…。 映画化して見てみたい作品。ウィリスは本当に生き生きとヴィジュアルに直すのがうまい作家だと改めて感心した。SFで権威ある賞であるヒ…

ドゥームズデイ・ブック

コニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』(ハヤカワ文庫SF) 読んだのは5年前に出た文庫版。もう5年経過ですか…。 映画化して見てみたい作品。ウィリスは本当に生き生きとヴィジュアルに直すのがうまい作家だと改めて感心した。SFで権威ある賞であるヒ…

脳髄工場

小林泰三『脳髄工場』(角川ホラー文庫) ホラー短編集なのだが、どちらかというとSFホラー寄りの短編集。久々に小林泰三の本を読んだわけだが、この短編集は小林泰三らしさがよく出ていたと感じる。叙述によるトリックホラーとロジックホラー、生活習慣と…

脳髄工場

小林泰三『脳髄工場』(角川ホラー文庫) ホラー短編集なのだが、どちらかというとSFホラー寄りの短編集。久々に小林泰三の本を読んだわけだが、この短編集は小林泰三らしさがよく出ていたと感じる。叙述によるトリックホラーとロジックホラー、生活習慣と…

青い世界の怪物

マレイ・ラインスター『青い世界の怪物』(ハヤカワ文庫SF)巷では海洋SFとして、有川浩、<深海のYrr>、藤崎慎吾が流行っている今日この頃ですが、敢えて逆行して1961年に書かれた47年前の海底SFを読むことにする。古典も読んでおかないとね!翻訳者は…

青い世界の怪物

マレイ・ラインスター『青い世界の怪物』(ハヤカワ文庫SF) 巷では海洋SFとして、有川浩、<深海のYrr>、藤崎慎吾が流行っている今日この頃ですが、敢えて逆行して1961年に書かれた47年前の海底SFを読むことにする。古典も読んでおかないとね!翻訳者…

コミケ襲撃

川上亮『コミケ襲撃』(TOブックス) 公式サイトはこちら>http://www.tobooks.jp/comiket/ 敬愛する川上亮の長編最新作。しかしこの人は多彩だとつくづく思うのだが、器用すぎてジャンル枠に収まらない作品ばかり書いている気がする。去年読んだ中で一番…

コミケ襲撃

川上亮『コミケ襲撃』(TOブックス) 公式サイトはこちら>http://www.tobooks.jp/comiket/ 敬愛する川上亮の長編最新作。しかしこの人は多彩だとつくづく思うのだが、器用すぎてジャンル枠に収まらない作品ばかり書いている気がする。去年読んだ中で一番…

時の果てのフェブラリー

山本弘『時の果てのフェブラリー』(徳間デュアル文庫) 山本弘はこれまで何冊か読んできたのだが、短編集ははずれがなかったので、今回ゲームのノベライズを除いた単独長編を読むことにした。オリジナルは角川スニーカー文庫から出ていたのだが、徳間デュア…

時の果てのフェブラリー

山本弘『時の果てのフェブラリー』(徳間デュアル文庫) 山本弘はこれまで何冊か読んできたのだが、短編集ははずれがなかったので、今回ゲームのノベライズを除いた単独長編を読むことにした。オリジナルは角川スニーカー文庫から出ていたのだが、徳間デュア…

処刑御使

荒山徹『処刑御使』(幻冬舎文庫) 山田風太郎の系譜に属する伝奇小説。荒山徹氏の作品はこれが初めてなのだが、これは普通に面白かった。山田風太郎の『甲賀忍法帖』(講談社文庫:読んでいない人は傑作なので読め!)や他の作品をたぶんベースにしていて、…

処刑御使

荒山徹『処刑御使』(幻冬舎文庫) 山田風太郎の系譜に属する伝奇小説。荒山徹氏の作品はこれが初めてなのだが、これは普通に面白かった。山田風太郎の『甲賀忍法帖』(講談社文庫:読んでいない人は傑作なので読め!)や他の作品をたぶんベースにしていて、…

全てを呪う詩 屍竜戦記2

片理誠『全てを呪う詩 屍竜戦記2』(徳間Edge)前作が屍竜使い自身の<力>を持つことに対する内的葛藤に焦点をあてていたのに対し、今回は汎教と真教という二大宗教団体の対立を軸に物語が展開しており、謎ときと謀略要素の強い異世界ファンタジー作品…

全てを呪う詩 屍竜戦記2

片理誠『全てを呪う詩 屍竜戦記2』(徳間Edge) 前作が屍竜使い自身の<力>を持つことに対する内的葛藤に焦点をあてていたのに対し、今回は汎教と真教という二大宗教団体の対立を軸に物語が展開しており、謎ときと謀略要素の強い異世界ファンタジー作品…

水の都の王女

J・グレゴリイ・キイズ『水の都の王女』(ハヤカワ文庫FT・上下) 上巻を読み終えてから下巻に取り掛かるのに1か月ほど(途中色々な本を読んでいたために、中断してしまった)後に読み終えた。尾之上俊彦氏の解説が述べているように、物語を構成する世界設定…

水の都の王女

J・グレゴリイ・キイズ『水の都の王女』(ハヤカワ文庫FT・上下) 上巻を読み終えてから下巻に取り掛かるのに1か月ほど(途中色々な本を読んでいたために、中断してしまった)後に読み終えた。尾之上俊彦氏の解説が述べているように、物語を構成する世界設定…